松本建築金物店

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セキュリティ講座【第一時限】




『円筒錠』は本当に“叩けば開く”のか?


 
先日のTVのスペシャル番組で、元泥棒(本当か怪しいと思う)の指導のもと、数々の住宅侵入実験がおこなわれていました。その中でも笑撃的だったのが、「円筒錠」とよばれるタイプの錠前が、クツの一撃でいとも簡単に開いてしまったというくだりでした。これはヤラセなのか、それとも!

 

本題の前に、「円筒錠」なるものが何であるかを一席。
円筒錠の中でもセキュリティが高いものの一つ 円筒錠とは、アメリカのSCHLAGE社によって初めて発売されたタイプのロックで、本国では『シリンドリカルロック』とよばれ、現在も住宅では主流として使われています。
日本では、第2次大戦後になってから輸入されたといわれ、その部品構造から簡易なシステムでの量産に向いていたたことと、職人の取付手間がたいへん簡易であったために、昭和30年代を中心に国内でも生産されはじめ、爆発的に普及しました。

一般的な特徴としては、ドアの横に54ミリ、小口から28ミリ程度の2個の円筒状の穴をあけ(これが名前の由来)セットでき、ドア小口から見えるフロントプレートのサイズが57ミリx24〜28ミリ程度。ノブの中心に鍵穴があり、室内側ノブの中心にあるユニバーサルボタンを押してドアを閉めると施錠する機能があることです。(バリエーションとしての例外もあります。)

 

さて、本題です。円筒錠は、叩いただけで開いてしまうような、もろい錠前なのでしょうか。

はっきり言ってしまえば、ほとんどのものが開きます。

強い衝撃によって、押してあったノブのボタンが「ポコン」と元にもどるのです。

円筒錠と一言でいっても、その構造や内部的な形状は数種類あります。その中でもっとも普及しているタイプ、つまり安価なシリーズにおいて、構造上、非常に強い衝撃をある一定の方向から与えることによって、内部のクラッチがはずれ解錠することは以前から知られていました。この症状は、使い込まれた古い錠において特に顕著です。


 

円筒錠は『UL』って規格認定に合格しているって聞いたんですけど!
UL『UL』とは、Underwriters Laboratories Inc. の略で、1894年に設立されたアメリカの火災保険業者団体によって設立された、世界最大規模の安全試験団体です。その目的は、火災、盗難等の査定で、それに付随する各種の事項に対し安全基準を設け、認定事業を設けています。
ロックに関しては、防火(火災時の高熱における変形等の耐久)と防犯(通常動作、破壊、不正解錠時の耐久)の二種の規格があるのですが、実は、円筒錠は「UL10B」つまり防火規格の認定しかうけていないのです。

 

昔から知られていた円筒錠の弱点!

今回の事例が騒がれるずっと以前から、円筒錠には数々の弱点があることが知られていました。
1.ラッチの強度
ドアの隙間からバール等を突っ込み、錠のラッチ部を強引に押し込んだり、受けからはずしたりといった攻撃に対し、非常にもろいのです。
諸外国と違い「靴を脱ぐ」と言う文化のある日本では、玄関ドアは外開きとなっているのが普通です。そのため、ラッチが外部から丸見えになるという、非常に厄介な常識に直面しています。特に、高度成長期やそれ以前の日本の住宅やアパートには、アルミや薄鉄板、ベニヤ中空等の変形しやすいドアが使用されていることが多く、閂[かんぬき]を持たないこのタイプの錠は、そういった強引な攻撃の標的にされてしまったのです。

 
2.ノブのもぎ取り 構造上、外部ノブさえ廻すことができれば開錠してしまうのが、このロックの特徴です。レンチのようなもので強引にノブを回せば、いとも簡単に開いてしまうのです。
 
3.シリンダーの破壊 特に安価なタイプになると、鍵穴にドライバー等を突っ込むことで強引にカギを開けてしまうこともできます。

以上のことから、我々の間では、「円筒錠は玄関に付けるべき錠前ではない」というのは常識でした。

これらのことは、開発国のアメリカでも知られていることですが、日本と決定的に違うのは、欧米のドアは「ワンドアー・ツーロック」が一般的であること。つまり、円筒錠がついているドアには、必ずといっていいほど、補助錠として閂[かんぬき]錠がついているため、日本の円筒錠単独での管理のものより、比較的に破壊侵入が困難なのです。
と、いうことは、対抗策は簡単です。補助錠を設置することで、十分にセキュリティが保てるのです。

 

じゃあ、円筒錠って何の取り柄もないの?
でも、そういう訳でもありません。たとえば、円筒錠の性能の特徴である自動施錠機能です。
自動施錠と言うのは、ドアが閉まると自動的に鍵がかかる錠前のことで、ホテルの客室などがそれです。この場面で、円筒錠は今も活躍しています。

「それじゃあ、ホテルの部屋は安心じゃないの!?」と聞こえてきそうですが、実は「自動施錠」というのがミソなのです。

衝撃で錠が開くということは、ボタンがはずれ、外側のノブが回る状態になるということです。通常のホテルに付いている円筒錠は、ホテル専用(自動施錠専用)なので、カギがないと外ノブが絶対に回りません。内側のボタンについても、マスターキーをシャットアウトするためのもので、一般のものとは全く違うものなのです。ですから、泊まったホテルにそれらが付いていたからといって、心配することは何もないのです。(その他の不正に関しても、ひと気の多い場所なので、時間がかかったり、大きな音がするような破壊行為は、まず無いと思われます。)


 

自宅の円筒錠が、簡単に自動施錠になる裏技!
実は、ほとんどすべてのシリンダー+ユニバーサルボタンタイプの円筒錠は、自動施錠専用タイプに変更することができるのです。
ユニバーサルボタンやり方は簡単。

  1. 通常施錠するように、ボタンを押します。

  2. 押し込んだたまま、ボタンをひねります。

  3. ボタンが付いている方のノブを回してみてください。ノブが回っても、ボタンが外れません。

  4. これで、出来上がりです。



  • この状態の時は、必ずカギを持って外出してください。中に入れなくなります。

こうすることによって、とりあえず叩く≠アとによる不正開錠には対抗できるようになります。

 

第一時限 終了





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